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2chで見つけた叙述トリック Part5

15 :名無しのオプ:2006/07/17(月) 00:49:19 ID:WHSpDHuD
「位置について、用意・・・」号砲が初夏の空気をあざやかに切り裂くと、
無造作にひっつめた夏帆のうしろ髪が、大きく左右にゆれながら、目の前を通り過ぎていった。

今日は体育祭。借り物競争が始まり、体育委員の俺はスターターをつとめていた。
ルールは、中間地点に置かれた紙に書かれた、物なり人なりを連れて、一緒にゴールする事。
『モップ』を取りに倉庫へ急ぐ奴もいれば、茶をすすっていた『校長』を無理やりひっぱってくる奴もいる。

夏帆は軽快に飛ばして、先頭で中間地点に着いたものの、紙を見つめたまま、すこし途方にくれている。
が、やがて意を決したように、元来た道を、スタート地点の俺のとこに、っておいおい戻ってきちゃったぞ。
「ねえ!一緒に来てくれない?」と、息をはずませる夏帆。
「え、俺?なんで?」と、ドキドキしつつも聞き返す俺。
「いいから、早く!ね、お願い!」と言うや否や、夏帆は俺の手をギュッと握ってひっぱった。
その手があんまりやわらかいんでビックリしたけど、夏帆の勢いに押されて、俺は走り出していた。

夏帆は意外にもけっこう速くて、俺も脚には自信があったから、最後には一着でゴールイン。
「なあ、ところでその紙、なんて書いてあったんだ?」
「秘密。あ、そろそろ戻った方がいいよ。次の組始まるみたいだし」
「ホントだ、早く戻んなきゃ。じゃ!」俺はあわててスタート地点まで駆け戻った・・・

・・・夏帆はその後ろ姿をしばらく見送った後、さっきからずっと握りしめていた紙を広げ、
そのしわくちゃになった文字をもう一度眺めると、そっとちいさく微笑んだ。
そして、誰も見ていないことを確認すると、素早くポケットにしまい込んだ。


『あなたのキライな人』と書かれた、ちいさな白い紙を。


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